2023/10/23Art

クサフグ Grass puffer

釣りにおいては所謂外道と呼ばれているが、私にとっては案外思い出深い魚で、今でもその愛らしい姿に見惚れてしまう。

私が小学1年生ぐらいの時。その年のゴールデンウィークは千葉の鴨川あたりのペンションに家族で泊まった。その頃から生き物好き、釣り好きであった私。そんな私を見て、父と母は家族旅行ではいつでも海岸の岩場に連れて行ってくれた。父は釣りの経験があったわけではなかったが、竿と仕掛けを準備してくれた。今思うと、父はどうやって釣りの知識を得ていたのか。20年経ってやっと考えてみる。

昼食で食べたイタリアンレストランのピザ。そこにのっていたエビを少しとっておき、その日も岩場へ向かった。エビを袋から出し、針につける。付け方は適当。いや、父がつけてくれたのか。今でははっきりと覚えていない。岩に囲まれ、時々外洋から水に入る水面に針を投げ込む。すると数秒のうちに、生命の鼓動が糸に伝わる。小学生の男の子は夢中になってリールを巻く。すると水面から、ふっくらした魚が姿を現した。柔らかくあどけない魚。しかしその子にとっては好奇心のエネルギーが昂る、立派な魚である。

その後も針を入れるたびに水面から顔を出す魚。それが私のクサフグとの出会いだった。

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